水面
水面は、のっぺりとしていた。
ただ平らで、そこにあった。揺らぎひとつ見せない様は、まるで、それが水面ではなくアクリル板なのだと言われても信じることができそうなほどだった。
それが水面であることは確かで、分かりきっているのだけれど。
私はぼんやりとそれを見ている。ただ、見ている。
水面下には、何やらいろいろなものがあった。それらはもうずっと前からそこにあって、確か私は、それらを拾い上げてやりたいと、ずっと思っていたのだった。そして向こうもまた、私に拾い上げられるのを、ずっと待っているはずだった。
けれども私はぼんやりとそれを見ている。ただ、見ている。
それが水面であることは、分かりきっているはずなのに、手を伸ばせば、そこまで容易に手が届くことは、分かりきっているはずなのに、私は手を伸ばせずにいる。
ただ平らな、揺らぎ一つ見せない水面は、本当にアクリル板のようで、手を伸ばしても、ぺたりとそれを拒むような気さえ、した。
水面は、のっぺりとしていた。
『ぼんやり』が、ゆるく重くそして確かに私を縛り付けていた。
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