なっちゃんと僕


 朝、学校に行く途中の坂道で、僕はなっちゃんの後ろ姿を見つけた。なっちゃんは坂道をものともせず早足で歩いている。背筋が伸びてて格好いい。
「なっちゃーん!おっはよー!」
 僕はどたばたと走ってなっちゃんに追いつくとそのまま勢いで背中に飛び付いた。バランスを崩してなっちゃんは僕もろとも転びそうになった。
「ちょっと何やってんのよ!」
「えへへー」
 僕を引きはがしてなっちゃんは僕をにらむけれどもその顔もまた凛々しい。
「何笑ってんの、気持ち悪いわね」
「だってなっちゃんが格好いいから」
「…………」
 なっちゃんは顔をしかめて黙り込んでしまった。そうか、なっちゃんは女の子なんだから格好いいじゃなくて可愛いって言ってあげればよかった。でも実際格好いいんだから仕方ない。
「ねえなっちゃん、学校まで一緒に行こう?」
 それもせっかくだから手をつないで行きたいなあと思って僕はなっちゃんに手を差し出した。するとなっちゃんはぴしゃりと僕の手を叩いてと先にスタスタと歩き出して行ってしまった。
「痛い……」
 僕が叩かれた手をさすりながらちょっと涙目になっていると、
「ほら、何やってんの、行くわよ」
 なっちゃんがこっちを振り向いてぶっきらぼうに言ってくれた。
「うん!」
 僕は慌ててなっちゃんを追いかけた。



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