間に合え
（ああ）
こうなって初めて、分かったような気がした。
確かに彼らは『敵』で、自分はここを壊滅させるためにこうして動いていたけれども。
（俺は、けしてあなたたちを嫌いではなかったのだ）
静かな狂気にとらわれた、どこか危うい、哀しい彼らを。
今ごろになって気が付くなんて。
自分はただ、彼らを救いたかったのだ。
「ちくしょう」
己の情けなさを呪って吐き捨てると、彼は駆け出した。
まだ間に合うだろうか。
自分はまだ、誰かを救うことができるだろうか。
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