相変わらず


 今日も寒い。
 俺は相変わらずコタツから出られない休日を過ごしていた。おそらく春まではこの調子だろうなと思う。まるで冬ごもりだ。
「おい!大変だ!」
 そんなふうに俺がコタツにもぐってぼんやりしていると、大声とともにスパーンとふすまが開いた。隣の家のタケピーだ。こいつも相変わらず勝手に人の家に上がり込んでは騒いでいる。
「あ?」
 俺はふすまを開けたまま仁王立ちしているタケピーを睨みあげた。
「なんだ、もうすぐバレンタインだから早く彼女見つけなきゃ、て話か」
「すげえ!なんで分かるんだ!さてはエスパーだな!」
 タケピーは大袈裟に驚いている。俺は溜め息をついた。
「バカだな。毎回毎回同じようなこと言って騒いでりゃ分かるだろう、普通」
「そっか?」
「分かったからふすまを閉めろ。そんなところに突っ立ってないでこっちに来るか出て行くかどっちかにしろ。寒いだろうが」
「うん」
 タケピーはうなずいてふすまを閉めるとごそごそとコタツに入って来た。
「で?可愛い彼女は見つかりそうなのか」
 俺が言うとタケピーは口をへの字に曲げた。
「……だったらこんなとこ来てねーよ」
「悪かったなこんなとこで。なんだ、こないだはナンパに成功してたじゃないか」
「は?こないだって?」
「ほら、正月だよ。ツカモトとシマムラと初詣行ったじゃん」
「ああ。……あれはそんなんじゃねーよ」
 タケピーは小さくなってさらにコタツにもぐりこんだ。俺はちょっと笑った。
「俺がチョコ贈ってやろうか」
「何言ってんだ。ヤロー同士でチョコ贈り合って何が楽しいんだよ。どうせ今年もたくさんもらうからお裾分けってやつだろ?いいよなー、イケメンは」
 じろりとタケピーは俺を見た。まったくこいつは。
「バカだな」
 俺だってもらうあてなんかないっていうのに。
 俺はコタツ板にあごを乗せて目を閉じた。本当にヤロー二人で何やってんだろうなと思いつつも、こういうのも悪くない、そんな気がしていた。



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