元旦


『あけおめ!突然だけど今日朝6時半に俺んちの前に集合!寝てたら起こしに行くからな!以上!』
 と、携帯にメールが入っていた。
「……」
 送信者は隣の家のタケピー、時刻は年も変わった直後の午前0時15分。年明け直後のメールはお控えくださいってテレビでもいってたというのにこのバカは。

 そして朝。俺は6時半ぴったりを見計らって外に出てやった。
「おう!あけおめ!」
 タケピーはすでに外に出ていて、俺を見るとそう言って片手を上げた。そしておどろいたのが、
「あ、おはよー。ていうか、あけおめー」
「……おはよう」
 タケピーの横で笑顔で手を振る女子と、さらにその後ろで寒そうに顔をしかめたまま少し頭を下げる女子。同じクラスのシマムラとツカモトだった。
「ああ、どうも」
 俺も少し頭を下げた。驚いた。なんでここに女子がいるんだ。
「じゃ、メンツもそろったし、そろそろ行きましょーか」
「おー!」
 タケピーが号令をかけると、シマムラだけが元気よく返事をした。俺は歩き出したタケピーに駆け寄り、こそこそと、
「なんなんだこの展開は」
「えー?だからこれから初日の出見て初詣行くんだよ」
 俺がわざわざ声をひそめているにもかかわらず、タケピーは声をひそめようともしない。いや、だから初日の出だ初詣だじゃなくて。
「そうじゃなくて、なんでここにシマムラとツカモトがいるんだよ」
「ああ、いや、なんかあいつらも初日の出見に行くって言うからさあ」
 えへへ、と笑ってタケピーはなぜか俺を肘でつついてくる。
「何すんだ」
「だってさあ。なんか今年も正月から縁起がいいよなー。いい一年になりそうだ!」
「……どっち狙いだ。シマムラか。ツカモトか」
「バカ、そんなんじゃねえよ」
「お前にバカとは言われたくないな」
 俺は溜め息をついた。ふと気付けば後ろの女子二人も何やら話している。
「ほら見て?何やら男二人でこそこそと」
「ほんと。怪しいわ」
「怪しいわよねー」
 俺が振り返ると二人はにやにやと笑っている。俺はもうひとつ溜め息をついた。



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