クリスマスの予定
寒い。
俺はコタツから出られないまま、ぼーっとテレビを見ていた。
本当は首まですっぽりコタツにもぐりこんでしまいたいところだ。座っているこの状態では背中が寒い。だが首まですっぽり入るなんてこのコタツでは無理だ。小さすぎる。
休日の昼下がり、テレビはどのチャンネルもつまらなかった。だが他にすることもない。外に出ると寒いし。
俺はコタツ板の上にあごをのせて目を閉じた。このまま少し寝ようかな、などと思っていると、
「大変だ!!」
突然、大声とともにスパーンと部屋のふすまが開いた。見れば思ったとおり隣家のバカだった。
「あ?」
まったく。またこいつか。俺は奴をにらみつけた。
「てめえいつもいつもいきなり勝手に人ん家上がり込んで来るなって言ってるだろーが!ていうかふすま閉めろ、寒い」
「おい大変だよちょっとどうする?」
彼は俺の話を聞いているのか聞いていないのか、とりあえずふすまを閉めると、もそもそとコタツに入り込んできた。
「は?大変って何が」
どうせまたくだらないことなんだろう。俺にとってはおまえの相手をする方がよっぽど大変だ。
「だってほら、もうすぐクリスマスだぜ?早く可愛い彼女さがさないと!」
「…………バカだな」
俺は一つ溜め息をついた。それのどこが大変だってんだ。
「なんだよ、ひょっとしてお前予定あるの?」
「ああもちろんだ。暖かい家でのんびり過ごすという立派な予定がな」
俺はそう答えてやった。まったく、相変わらずこのバカはくだらないことばかり考えてんなあ。
「だいたいなんでこの冬の寒い中わざわざ出歩かなきゃいけないんだ。コタツで年末の特番見ながらミカンを食べて何が悪い」
すると彼はじとりと俺をにらみつけてきた。
「お前ほんと余裕だよな。彼女なんていつでもできると思ってんだろ。やっぱイケメンは違うねえ」
「…………は?」
何を言ってるんだこいつは。
俺は思わず彼の顔をまじまじと見た。
「なんだよ。なに見てんだよ」
「え?だって、俺に言わせればよっぽどおまえの方が格好いいから」
「なっ……何言ってんだよ!」
彼はなぜかみるみるうちに赤くなり、コタツの中で俺の足を蹴飛ばした。痛えな!と俺も思いっきり彼の足を蹴り返してやった。
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