おみやげ


「ミスターメリーのご機嫌はいかがでした?」
 そういえば、とツァーランは訊いてみた。確かそもそもの用事はそれだったはずだ。ライエは苦笑いして首を振った。
「相変わらずだ。結局今日も休業だそうだ」
「本当に相変わらずね」
 ツァーランもあきれ顔で同じようにかぶりを振った。ミスターメリーにも困ったものだ。
「ところで」
 ふとツァーランはテーブルの片隅を指差した。
「さっきから気になってたんだけどそれは何?私そんなもの頼んだ覚えはないんだけど」
 そこには籠が置いてあった。中で何か動いているように見えるのは気のせいだろうか。
「ああ、これはおみやげだ。ほら」
「おみやげ?」
 ライエは笑顔で籠の中身を見せた。シェイアも駆け寄ってきてそれをのぞき込み、ぱっと顔を輝かせた。
「うわ!可愛いー!」
 それは二羽の小鳥だった。
「どうしたのこれ」
 ツァーランも籠をのぞき込み、眉をひそめた。
「ああ、市場の片隅で寄り添ってぴーぴー鳴いてたから拾ってきた」
 平然とライエは答えた。ツァーランはますます険しい顔になる。
「拾ってきたって……」
「飼うの?飼うの?」
「ああそのつもりだよ」
 はしゃぐシェイアと呑気なライエにツァーランは溜め息をついた。こっちはとてもそんな気分にはなれない。
「もう……。これ以上居候を増やしてどうするのよ。ていうかおみやげを拾い物ですませるなんて」
 まったく呆れた話だった。



戻る
- ナノ -