小さな、けれども大きな
「ただいまあ」
「あ、おかえりー」
帰ってくると、散らかった部屋で、同居人が絵本を読んでいた。
「うわ、あんた何散らかしてるの」
「えー、どうせ普段から散らかってるから一緒じゃん」
お菓子のおまけの小さな絵本も、この同居人にとっては抱えるのがやっとだ。なぜなら、
「小人でしょー? むしろ片付けといてよ」
「は? なにその理屈。小人はメイドじゃありませーん」
そう。私の部屋には小人が住み着いている。身長13cm、体重秘密、小生意気な女の子だ。
私だって最初に見た時は驚いた。頭がどうかしてしまったのかと思った。けれども慣れとは恐ろしいもので、今ではすっかり小人は私の生活に馴染んでしまっている。
「ああそうだ、おみやげ買ってきたよ」
「え? なになに?」
「服買ってみたんだけど、合うかなあ」
「なにそれ、ダサ!」
「ええ!?」
いや、本当はやっぱり小人なんて私の妄想じゃないかと思うこともある。本当は、単に一人暮らしの寂しさに耐えかねておかしくなってしまっただけのことなんじゃないかと思うこともある。けれども、
「似合うと思ったんだけどなあ」
「ていうかもうそれすでにコスプレじゃん! あんたあたしに何させたいわけ?」
「ちょっと着てみてよー」
「絶対いや!」
帰ってくればおかえりと出迎えてくれる、他愛もない話で笑い合う、そんなこいつは、もう誰がなんと言おうと、私の大事な家族だった。
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