こびと


「あ、そうだ」
 友達とショッピングに出かけた時のこと、気になるお店もあらかた周って、もう帰ろうか、となった時だった。
「ここにも寄っていい?」
 そう言って、彼女がおもちゃ屋さんを指差した。
「あー、いいよ」
 おもちゃ屋さんかあ、そういえば久しく行ってないなあ。
「でもなんで?」
「いや、うち小人がいるからさあ、おみやげ買ってってやろうと思って」
 は?
 私は耳を疑った。
「こびと?」
 そんなバカな。
「そう、小人。子どもじゃないよ」
 けれども彼女はやっぱりあっさりとそう答えた。そしてすたすたと店に入ると人形のコーナーへ真っ直ぐ向かっていった。
「そいつがさあ、新しい服が欲しいってうるさいんだよねー」
 言いながら、人形用の小さな服を見ている。えーと。
「小人がいるって……?」
 私はおそるおそる尋ねた。
「うん。こんくらいの。こいつが生意気だけど可愛いんだー」
 彼女は親指と人差し指を広げてみせた。12〜13cmくらい、てところだろうか。いや、だからそんなバカな。
「あ、これ可愛いなあ、でもサイズがどうかなあ」
 けれども彼女は女の子の人形の服を、結構真剣に選んでいる。どうしよう。話合わせた方がいいのかな。
「えーと、女の子、なの?」
「うん。あ、これなんかいいかも。どう?」
 どうって……。
「あ、ああ……いいんじゃない?」
「よし、じゃあこれにしよう。ちょっと買ってくるね」
「うん」
 いや、だから小人って……。
 私は、レジに向かう彼女を呆然と見送った。



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