課題


 というわけで頑張ってね、と気楽な調子で透さんから渡された紙にはアルファベットと記号がどこか整然と並んでいた。まあ一応何が書いてあるかぐらいは何となく分かるようになったけれども、その流れまでつかむのは一苦労で、自然と表情も険しくなってしまう。
「あれ波多野君。難しい顔して何見てるの?」
 そうしているとそんなセリフとともに横に誰かの気配がした。ひとつ溜め息をついて顔を上げるといたのは同じクラスの星野だった。
「なにそれ、文字化け?」
 俺の手元の紙をのぞき込んで星野は首をかしげている。俺はまた溜め息をついた。
「こんな規則的な文字化けがあるかよ。これはなー、いわゆるシステムプログラムってやつ。こいつを解読してなおかつ改良してみてほしいんだとさ」
 透さんがどこからか持って来た(おそらく倉沢さんを通じて手に入れたのだろう)研究所の結界システムのプログラム、ただしバージョンゼロの試作品、だそうだ。
『おそらく基本的な部分はそのままなんじゃないかと思うけど、何せ試作品でしかも古いものだからね、もちろん現在は今の時代にあったそれ相応の改良がされてるはずなんだ。そこで、涼くんだったらどう改良するかなあと思って。ねえ、ちょっと考えてみてよ』
 というのが透さんから出されたいわゆる課題だった。なんでも、そういったアイデアも参考にしながら、実際はどうなっているかの予測とそこから考えられる弱点を導き出したいらしい。俺なんかの素人考えでいいのかねえ。
「うわ〜、なんか大変そうだね〜」
「分かったなら邪魔すんなよ」
「ていうかやっぱり僕にはそれ文字化けにしか見えないよ」
「だからこんな規則的な文字化けがあるかって」



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