カボチャプリン


「じゃーん。トリックオアトリート〜。今日はハロウィンなのでカボチャプリンを作ってみました〜」
 そんなことを言いながら透さんが部室の机にどんとそれを置いた。
「先生、トリックオアトリートはお菓子もらう方が言うセリフですよ?」
 部員のだれかがそんな突っ込みを入れている。だが突っ込みどころはそこだけではない。
「しかし豪快ですねー。バケツプリンみたいじゃないですか」
 さらに他からも冷静な突っ込みが入る。そのカボチャプリンはまず器がカボチャだった。それもハロウィンによくあるオレンジ色のものではなく普通にそのへんに売ってあるような緑色のものをくり抜いて器にしているようだ。一応マジックで顔のようなものが描かれているけれども。
「あ、スプーンこっちあるよ、せっかくだからみんなでつつこうよ」
「ほんとですか?わーい」
 透さんはビニール袋からプラスチックのスプーンを取り出して配り始めた。まあ透さんのことだから味に問題はないだろうけど。
「やっぱり何か違う気がする……」
「え?涼くん何か言った?」
「いや、なんでもない」
 まあいいか。ハロウィンだからカボチャの煮付けだとか言ってた頃に比べれば。
 とりあえずいただくことにしよう。俺もさっそくスプーンを持ち直すと、すでにプリンをつついてはしゃいでいるみんなに混ざることにした。



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