とりあえず悪戯


 ガラガラガラ!と勢いよく研究室のドアが開いた。
「ハッピーハロウィン!!とりあえず悪戯させろ!五!四!三!二!一!どかあん!!」
 ぼんっ!
「!?」
 何ごとかとドアの方を振り返れば、何やらオレンジっぽい着ぐるみがバズーカのようなものを構えていた。ぽかんとする僕らの上に、キラキラした色とりどりのテープや紙吹雪が遅れてひらひらと降ってくる。どうやらバズーカではなく大きなクラッカーをぶっ放したらしい。
 よく見れば、オレンジっぽい着ぐるみ(どうやらカボチャの着ぐるみらしい)は桂木さんだった。さらによく見ればその背後にはドラキュラの格好が異様に似合う倉沢さんが控えている。
「桂木さん……。何やってるんすか」
「え?悪戯」
「やだなあ、お菓子ならちゃんと用意してたのに」
「あ、すみませんねえ。せっかくですからこれもいただいていきますね」
 いち早く立ち直ったらしい中嶋さんがお菓子の詰め合わせをどこからともなく取り出し、倉沢さんがにこにことそれを受け取っている。えーと。
「じゃ、そういうことで」
 驚いた僕らに満足したのか、桂木さんは満面の笑顔でひらりと手を振るとさっさと行ってしまった。倉沢さんももう一度すみませんねえと笑って桂木さんについて行ってしまう。今度はどこに行く気だろう。
 僕はぐるりと研究室を見回した。色とりどりのキラキラしたテープや紙吹雪が部屋中に散らばっている。
 えーと。
 ……これ誰が片付けるんだ?



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