かんべんしてください


「こんにちはー」
「いらっしゃい美紀ちゃん……て何それ」
「うふふ。おみやげ」
 暁美の家に遊びに来た美紀は何やら大きな紙袋を提げてきていた。何となく嫌な予感がして暁美が尋ねてみても、うふふと笑ってテキトーにはぐらかされてしまう。まあどうぞと招きいれて部屋で一息ついたところで、美紀は例の紙袋の中身を床に広げはじめた。
「じゃじゃーん」
 それも謎の効果音つきで。
「……なにそれ」
「何って」
 そこにあったのはツノのついたカチューシャとコウモリっぽい形の羽、どれも黒地にカラフルなスパンコールやら何やらでキラキラしている。
「決まってるじゃない、ハロウィンの仮装の衣装よ」
「ハロウィン?」
「そうそう」
 さらに取り出したのはミニ丈らしきワンピースにロングヘアのウィッグ。ワンピースのお尻のところからはどうやら尻尾のようなものが飛び出しているようだ。
「……美紀ちゃんが着るの?」
「何言ってるの、暁美が着るのよ?」
「えー!なんであたしが」
「ほらほら立って、まずは取りあえずこれね」
 と、美紀はワンピースを暁美に押しつけた。反射的に受け取って一応体の前に当ててみる。
「何これ、腹巻き?」
「やだ、そんな派手な腹巻きあるわけないじゃなーい」
 だが予想以上のミニ丈だ。お尻しか隠れないというかお尻が隠れるのもやっとという感じだった。体にぴったりとしたラインに肩も丸出しのデザインでとても着る気になれない。
「よかったらタイツもあるわよ。まああたしとしてはぜひ生足を出してもらいたいところなんだけど」
「…………」
 だが、よかったらと言われても美紀が持っているのは網タイツだ。生足も微妙だが網タイツもどうだろう。いやそもそもこの衣装がどうだろう。暁美は複雑な気分で美紀と仮装セットを眺めやる。
「もう、何嫌そうな顔してるのよー」
「……ていうかそもそもなんでハロウィンだからって仮装しなきゃいけないのよ」
「えー、だってハロウィンてそういう行事じゃないの。ほら、セクシーに仮装して気になる彼を悩殺よ!お菓子はいいからイタズラさ・せ・て、だとか!きゃー!!」
「美紀ちゃん……」
 そして複雑な気分の暁美をよそに美紀は何やら一人で大はしゃぎしていた。



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