「なーかじーまさーん」
「ん?ああ伊東か。何?」
 中嶋さんは読書中だった。ちらりとだけこちらを見て、またすぐに本に視線を戻してしまう。
「何ってほら、ハロウィンですよ?お菓子くれなきゃいたずらしますよ?」
「あーお菓子な。ほれ」
 中嶋さんの背中ていうか肩に乗っかかって僕が言うと、中嶋さんはポケットからひょいとハロウィンっぽい柄の小さなビニール袋を取り出して渡してくれた。中には飴が幾つか入っている。
「うわ、なんでそこからお菓子が出てくるんですか。それ四次元ポケットですか」
「なんだよ、お菓子が欲しいんじゃなかったのかよ」
「いや、まあ、えーと……。いえ、いただきます」
 なんだかんだいってこのひと用意いいよなあと僕はちょっと複雑な気分になりながら飴を一個口に放り込んだ。途端に有り得ない味が口の中に広がって僕は目を白黒させてしまう。
「…………!?!?」
「ああそうだ、言い忘れてたけどその飴中に激辛のが混ざってるから気をつけろよ」
「ちょ……!!」
 さらっととんでもないことを言う中嶋さんを涙目でにらみつけると、中嶋さんはまたちらりとこちらを見てにやりと笑った。
「あれ?早速当たっちゃった?」
 当たっちゃった?じゃないですよ、もう!



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