面接


 若いなあ、てのが彼らの第一印象だった。
 いや、実際ここに入ってみれば彼らだけでなく他の奴等も若かったし、一緒に入った奴等も俺より10は若かった。どうやら俺が一番年上のようだ。参ったなあ。
 一応、といった感じの簡単な面接だけであっさり入れた職場だった。その時の面接官だったのが彼ら、ここの所長さんと副所長さんだ。所長さんはやたらにこにこしていた。副所長さんは無理して気難しそうな顔を作っているようだった。
 中嶋さんはどうしてここへ入ろうと思われたんですか、という定番の質問をされた。定番だがありきたりな答えは望まれていないようだった、ていうかこんな所への志望動機にありきたりな答えなど存在しないだろう。
「俺は」
 だから俺は遠慮しなかった。
「俺はずっと、世界はもうすぐ終わると思っていたんですよ。ほら、何か有名な予言あったじゃないですか。俺、あれ本気で信じてたんですよ」
 そう、だから俺の人生ももっと早く終わると思っていた。どうせ先はないのだからと何となくてきとうに生きてきた。なのにどうだ。
「それなのに、結局世界が終わることなんてなかった」
 結局世界は何ごともなく存在し続け、俺の人生設計は大きく狂ってしまった。俺は考えもしなかった未来へ放り出され、途方にくれるばかりだった。
「そしたらここの話を聞いて、ああ、これならと思いました。これで今度こそ、本当に世界を終わりにすることができる、そう思ったんです」
 所長さんはにこにこと笑ったまま、副所長さんは気難しそうな顔を作ったまま、じっと俺の話を聞いていた。馬鹿馬鹿しいと思われるかもしれなかったが本音だった。第一、馬鹿馬鹿しいというならば先に馬鹿な話を持ち出したのはそっちの方じゃあないか。
 実はこの面接の前に、ここがどういうところで何をしようとしているのか、だいだいの説明があった。そしてそれでも、と思った奴等だけがこうして残って面接を受けている。
 つまり今残っている奴等には、こいつらの仲間に加わる意思がある、そしてここに入るためにはそれだけでほぼ充分なのだということだ。
「わかりました」
 やがて所長さんの方が笑顔のままうなずいた。どうやら俺の答えがお気に召したようで、その笑顔はたいそう満足げだった。



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