そんなような話?


「ちょっと小春兄さん、お出かけ?」
 さてちょっくら行ってきましょうかね、と外へ向かいかけたところで、小春は刺のある声に呼び止められた。振り向くと、妹の夏美が腰に手を当てて小春をにらみつけている。
「暇なら手伝ってよ。これから忙しくなるってのに」
 ちなみに彼女の背景は喫茶店。それはかれらの表の家業だった。飲茶屋とカフェを足して二で割ったような独特の雰囲気はそこそこ人気があり、近くに学校があることもあって、特に夕方からは学校帰りの中高生たちで賑わう忙しい時間帯なのだ。
「あー悪かったな。別件なんだよ別件」
 だがこっちだって大事な仕事なのだ。小春の答えに夏美もぴんときたらしく、それなら仕方ないけどといった様子で溜め息をついた。
「別件ね……早くすませて帰ってきてよ」
「はいはい」
 小春はひらひらと片手を振って、からんと音のなるドアを開けて外に出た。



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