誤解


「桂木さん」
「ん?」
「俺は今まで思い違いをしていたようです」
「え?いきなり何?」
「てっきり彼はここにいるものだとばかり思っていました。例えば姿を見せない所長がそうなのではないか、行方不明だとかいうのは嘘で、この研究所のどこかにかくまわれているのではないかと。……けれども違ったんですね。彼はここにはいない。本当にここから逃げ出していたんだ。桂木さん、研究所は今も彼の行方を追っているのですか?」
「あー、時緒のこと?どうだろう、あまりあいつを捜すことについては積極的ではないね。たとえ見つかってももう仲間に加える気はないし」
「彼が勝手に『天使』を悪用して事件を起こした、研究所はむしろ利用されたようなものだった、その話も表向きのものだと思っていました。でもそうじゃなかった。俺はずっと、騙されていたんだ」
「どうしたのりょーちゃん、顔色悪いよ?」
「桂木さん、俺は……」
「なに?」
「俺はたぶん、彼の居場所を知っています」



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