すまない


 久し振りにやってきた桐島は酷く疲れた顔をしていた。
「どうした」
「いや、ちょっと」
「なんか顔色が悪いぞ」
「そうかもな」
「何かあったのか」
「いや、ただ最近寝てないだけだ」
「寝てないって」
「眠れないんだ」
 ぐったりと座り込み大きな溜め息をつく。
「何かあったのか」
 俺はまた同じセリフをくりかえした。彼は答えず黙り込んでいる。
 俺もひとつ溜め息をついた。
「とりあえずお茶でもいれるから」
「すまない」
 彼はこちらを見ないまま言って、腕で顔を覆った。
「いずれ話す。今は……ちょっと何をどう話したらいいのか分からないんだ」
「そうか」
「佐倉」
「ん?」
「……すまない」



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