ダミー


 朝の全校集会。学園長の話はいつも長い。
「ねえ暁美知ってる?」
「ん?」
 眠気と戦いながらぼんやりしていると、ふと後ろの友人からつつかれて暁美は振り返った。
「何?」
「実はあそこでしゃべってるのはダミーで真の学園長は別にいるって話」
「は?なにそれ」
「なんでも真の学園長は訳あって表に出ることができないもんだから、こういった集会とか式典とかのためにダミーの学園長を用意したって話らしいわよ」
「へー」
 それは初耳だった。暁美はあらためて前を見た。体育館のステージの上に立つ学園長は貫禄はあるが極めて普通っぽいオジサンだ。その話はまだまだ終わりそうにない。
「ちなみに真の学園長はあれとは似ても似つかぬイケメンらしいわ」
「えー。何なのそのいかにもな話」
 暁美が苦笑いすると友人もちょっと笑って言った。
「まあ、真の学園長の姿を見た者はいないって話だからその辺はいろいろなんだけどね。セクシーな美女だとかいう話もあればダンディなおじさまだっていう話もあったり」
「ふーん」
 まさか学園長まで何やらいわくつきだったとは。本当に妙な噂の多いところだ。
「どうせならセクシーなイケメンがいいなあ」
 友人はうっとりとどこか遠くを見つめている。はいはい、と暁美はてきとうに相槌をうった。
「それにしても美紀ちゃんてほんとこういう噂に詳しいよね」
「えへへー」



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