追跡
「倉沢くーん」
呼ばれて倉沢が振り返ると、透の片手がにゅっと伸びて手招きしていた。もう片方の手で頬杖をついて、その視線は小さなモニターを見つめたままだ。
「何ですか」
「これなんだけど」
透はモニターを指差した。そこに映しだされているのは、突然消えてしまった研究所の跡地。今はただの空き地になっている。何か手掛かりが見つかればと鳩に小型カメラを付けて偵察に向かわせていた、その映像だ。
「おや」
モニターを覗きこみ、倉沢も目を見開いた。ちょうど跡地と道路を区切るフェンスのところに人影がある。大柄な男性、今風の青年、小柄な女の子の三人連れだ。
「どう思う?」
彼らはフェンスの向こうを覗きこんだり指差したりしながら何やら話している。声は入っていないが、どう見てもたまたまそこで立ち話というわけではなさそうだ。
「明らかにわざわざここを見に来てるっぽいよね。できれば関係者だったらいいなあとか思ってるんだけど。どう?倉沢くん見覚えない?」
「そうですねえ……」
倉沢は眉間にしわをよせて映像をじっと見つめていたが、やがて首を横に振った。
「残念ながら。少なくとも研究所の関係者ではないようです」
「そう」
透は溜め息をついた。
「やっぱりそう簡単にはいかないかな」
「これはリアルタイムの映像ですか?」
「うん」
「向かいましょうか」
「いや、でも向かってる間にいなくなっちゃうかもしれない」
「それじゃあ」
ふと倉沢は何やらリモコンのようなものを取ってきて操作しはじめた。
「え?何やってるの?」
一通り操作し終えると倉沢はあっさりと答えた。
「鳩に指令を送りました。彼らが……まあとりあえずその偉そうな人にしぼりましたが、その彼が動くと追跡します」
「へー。て、ちょっといつのまにそんな機能が」
「はい。偵察に向かわせる前に少し改造しました」
「あーそうなんだ……」
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