勉強中


「あれ何やってんの透、宿題?」
 ぼくが猛勉強しているのを見てか涼が不思議そうに声をかけてきた。
「いや、そういうわけでもないんだけど」
 ぼくは顔を上げてひとつためいきをつくとのびをした。少し休憩しよう。そうしよう。
「どうでもいいけどこんなとこでやんないで部屋でやれよなー。俺がこっちでやってたら部屋行けって怒るくせに」
「あー、そうだね」
 ぼくは教科書やノートをぱたんぱたんと閉じてまとめた。
「でも部屋に一人だと寂しいんだよなあ」
 ぽつりとつぶやくと、何言ってんだよと涼にあきれ顔で言われた。
 就職先はめでたく決まったものの、よりによって苦手科目を担当することになってしまった。絶対にわざとだなと思ったけれども仕方がないので猛勉強中というわけだ。
「あ、そういえば」
 ふと今更のように思い至ってつぶやいた。
「春から涼と同じ中学だ」
「は?誰が」
「ぼくが」
「へー、透また中学生からやり直し?」
「違うよ。ぼくは先生」
「はあ!?マジかよ!」



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