学園長


「弟さん?」
 学園長だと紹介されたその人は、ぼくを見て兄貴を見た。
「ふーん。似てるわね、眼鏡が」
 机にだらんと頬杖をつき、こちらを見上げている。
「つまり眼鏡しか似てないわねってことなんだけど」
 何故か場所は保健室。学園長は普段はここで養護教諭をしているそうだ。はだけた白衣に大きな胸を強調した服、さらにミニスカートという大変目のやり場に困るいでたちだった。いいのかそれで。
「そうですかね。よく似てると言われますが」
 兄貴はまったく動じずにそう切り返していた。あきれたように学園長はひとつためいきをついた。
「アタシはあなたにお願いしたかったんだけど?」
「おれは無理だと言ったでしょう。こいつなら大丈夫ですよ」
 兄貴はぼくの背中をぽんとたたいた。
「……へえ」
「というよりも、むしろ逆にこちらからこいつのことをあなたに頼みたいんです」
「ふーん……」
 学園長はぼくを見上げた。ひとつひとつの仕草が無駄に色っぽい。ぼくはなんだかいろんな意味で緊張してしまった。
「じゃあ一応訊いとくけど」
「はい」
 ぼくは思わず姿勢を正した。
「あんた理系?文系?体育会系?」
「文系です」
「得意科目は?」
「社会、ですかね」
「じゃあ苦手科目は?」
「数学です」
「へーえ……」
 にやり、と学園長は笑った。
「オッケー。わかったわ」



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