そうか


 ぼくの話が終わると、そうか、とだけ呟いて、彼はうつむいて黙り込んでしまった。きっと驚いたろうし少し混乱しているのかもしれない。
 一方のぼくは寂しい中にもどこか晴れ晴れとした気分だった。ずっと隠してきたことを明かしてすっきりしたのだろう。彼には申し訳ないけれど、きっとこれでよかったのだ。たとえこれでまたぼくが居場所を失ってしまうことになろうとも。
 勝手な話だと思う。だったら最初からかかわらなければよかったのだ、ぼくなんか。あの日、ぼくは差し延べられたその手をとるべきではなかったのだ。
 ぼくをどうするかは彼に任せることにした。追い出されようがどうなろうが文句をいうつもりはなかった。
 ぼくはただ静かにそのときを待つ。



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