メモ
◇浮かれてる(そこ物)

 今日の桂木さんは朝からなんだか浮かれていた。鼻歌を歌うのはまあよくあることだったけれども鼻歌というには声が大きい。さらに意味もなく部屋をウロウロしているのでこっちまでなんだか落ち着かない。
「なんかヤバくないですか」
「ヤバいね」
 たまたまやってきた伊東さんも驚いている。
「あんな桂木さん初めて見ました」
「俺も」
 伊東さんが言うならよっぽどだ。研究所史上初なのかもしれない。
「あの、桂木さん」
 俺は桂木さんに声を掛けてみた。
「どうしたんですか。何かいいことでもあったんですか」
「うん、ちょっとね〜。うふふふ〜ん」
 すると桂木さんはくるりと一回転しながら言った。やっぱり相当浮かれている。
「ひょっとして彼女でもできたんですか」
 横から伊東さんが言った。いやそれはちょっと違うんじゃ、
「それがそうなんだな〜うへへへへ」
 ……マジでか。
「へー。美人なんすか?」
「そりゃあもう!」
 さらに伊東さんが訊くと桂木さんは恥ずかしげもなく即答した。
「ていうか、美人なだけじゃなくて可愛いし〜、でもって色っぽいし〜、なんてったってラブラブだし!ああそうだ、夏になったら海に行きたいな〜、波打ち際で追いかけっこしたり水かけ合ったりしたいな〜、水着姿を堪能してからさらにあーんなことやこーんなこともしたいなあ、ららら〜」
 そして桂木さんはまた歌いながらくるくる回りだしてしまった。
「…………」
 俺は溜め息をついて伊東さんを見た。同じタイミングで伊東さんもこちらを見たため顔を見合わせる形になってしまい、今度は二人そろって溜め息をついた。
「……まあいいんじゃないの、幸せそうで」
「でも正直うるさいんですけど」
 ガタン!と大きな音がした。桂木さんが勢い余って机にぶつかり転びそうになっている。
「ちょっと大丈夫ですか?」
「うん大丈夫大丈夫」
 ……ある意味全然大丈夫じゃなさそうだった。

--------------
たぶん本編ではちょっとなさそうというかむしろ私の中では二次創作に近いネタなのでこっちにこっそりupしてみました。いや、浮かれる桂木くんが書きたかっただけなんです(笑)。桂木くんは彼女ができたらきっと恥ずかしげもなくノロケまくると思います(^^)
戻る
- ナノ -