メモ
◇天才じゃない(そこ物)

 副所長さんが廊下の窓枠に寄りかかってぼけーっと外を見ている。
 いや、そう見えるだけで本当はいろんなことを目まぐるしく考えているのだろうと思い直す。副所長さんはきっと自分などにはおよそ想像もつかないようなことを常に考えている。
「私は別に天才などではありませんよ」
 副所長さんてすごいですよね天才ですよね、といつだったか俺が言ったら副所長さんは淡々とそう答えていた。
「むしろ、自分はいわゆる一般人よりも劣っている、そう思っています」
「でも学校でも成績良かったりしたんじゃないですか」
「例えば、宿題を写させてくれと頼む生徒と、言われるままに写させてあげる生徒とでは、きっと前者の方がよりこの世の中では効率よく生きていけるだろう、そういうことです」
「はあ」
「けれども、ある意味それが私を救っていたのかもしれません。たとえただ利用されるだけの存在でも、一応は存在することを許されていたのですから」
 副所長さんの話は俺にはよく分からなかった。その時の副所長さんが悲しそうだったのか寂しそうだったのか笑っていたのかうつむいていたのかも、もう分からなかった。どれも違っていたのかもしれないし、そのすべてだったのかもしれない。
 俺も窓の向こうに目をやってみる。そこにあるのは草木の生い茂った山肌だ。けれども前からそうだったかな、と思う。それはまるで思い出の中の風景のように、この場所は顔を上げるたびにその様を変えているような気もする。


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すみませんよく分かりませんね(汗)。とりあえず短いしなんでもない話なのでもうこっちに置きました。
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