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創作メモ 24/4/12 Fri 22:32
「わたしが探していたのは物語の舞台だけではありません。むしろその物語の登場人物にふさわしい人をこそ探していたと言ってもいいでしょう」
 そして僕はまさにそれにふさわしいということなんだろう。
「そうだ、お名前を聞いていませんでしたね」
 急に思い出したようにその人が言って、僕もそういえばそうだったと今さらのように思った。そもそも彼が名前を持つような存在だというのが意外な気さえした。
「わたしは藤夢積といいます。あなたは?」
「桐島広海です」
「ここの生徒さんですよね? 何年生ですか?」
「二年生です」
「そうですか。桐島くん、これからよろしくお願いしますね」
 彼、夢積さんはそういって僕に握手を求めてきた。
「……はい」
 僕はその手を握り返した。その瞬間、確かに、まるで自分が現実を越えたような、まさに物語の登場人物になったような、そんな気がした。
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