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創作メモ 22/7/17 Sun 11:58
秘密組織の朝は早い(3)
「おはようございます」
「え?」
 すると急に声とともにがらがらと扉が開いた。驚いて振り返ると倉沢さんだ。
「おはようございます」
「ずいぶんお早いですね」
「……そちらこそ」
 それこそまだずいぶん早い時間なのに。タイミングがいいなと思い、そこで監視カメラの存在を思い出してなんとも複雑な気分になった。きっとあたしが起きたのに気づいてやってきたということなんだろう。
「倉沢さんも朝早くから大変ですね。昨日はここに泊まり込みだったんですか」
 つい嫌みも言いたくなってしまうというもんだ。
「それはお気遣いありがとうございます」
 もっとも、効果があったのかどうかは分からないけれど。
「けれどもご心配なく。この研究所には寮もありましてね、私を含め所員はみなそこに住んでいますので。まあ、桂木さんみたいに、もはや研究室に住んでるみたいな人もいますが」
「ああそうなんですか」
「ええ。ですから」
 そこで倉沢さんは思わせ振りに台詞を切った。
「一度入ったら出られない、それは、我々も同じなのですよ」
「…………」
 でもこの人たちは望んでここにいるはずだ。無理矢理誘拐されてきたあたしとは違う。
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