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創作メモ 22/6/28 Tue 12:38
秘密組織の朝は早い(2)
 また昨日みたいにカーテンを少しだけ開けて外を見てみる。相変わらずの閑静な住宅街だ。今はまだ朝早いせいか人通りはないけれども、もう少し経って、いわゆる通勤通学の時間になれば、ご近所さんたちでそれなりに人通りは多くなりそうだ。
 だったらそれに合わせて助けを求めてみるのはどうだろうとふと思う。例えば人がそこを通るのを見計らって、この窓から身を乗り出して叫んでみるのだ。あたしはここに誘拐されてるんです、助けてください。
 ……なんてね。
 あたしは思わず苦笑いした。そんなことしたところできっと無駄なんだろう。確か遙さんが言っていなかっただろうか。この研究所は建物自体が普通の人には見えない仕掛けになっているって。
 ため息とともにカーテンを元通り閉めようとして、けれどもあたしは逆に勢いよく全開にすることにした。せめて少しでも明るくしたいと思ったのだ。部屋の中も、あたしの気分も。
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