カルロは普段は節度を守って適度な距離を保っているのに、時々何かが取り付いたかのように突然距離を縮めて来る時がある。
例えば深酒をしてしまった時なんかに多くて、今も俺の名前を何度も呼んでもう捨てないでと子供のように泣きじゃくるのだった。
ボロボロのカルロを拾った時はこうなるだなんて思っても無かった。
コイツ、全力で俺に威嚇してきたし。
「おい、カルロ。もう寝ろ。」
弱いくせに時々酒に溺れるカルロの服を緩めて、ベッドに転がせば唸り声だけで返事を返された。
「スパーダ、さま。」
弱弱しい声で俺を呼んで俺の腕を掴んだカルロは、その声とは程遠い力で俺をベッドに押し付けた。
「おい、コラ、カルロ!」
名前を呼んで見上げれば、まだ泣きそうな顔で俺を見るカルロの顔が目の前に合った。
「…貴方の意識内のほんの数ミリで構わないんです、自分の付け入る隙を下さい。自分を愛して下さいとは言えません、スパーダ様を愛する自分を許してください。」
ギリギリまで近づけられた顔と真剣な眼差しに打ち抜かれた俺は、意味のない言葉を口から漏らして、頬を赤に染めるだけだった。
力尽きたように、俺の上で寝息を立てるカルロの頭をくしゃりと撫でる。
どうせお前はいつもみたいに忘れるんだろ?
「お前だけだと思うんじゃねーぞ。」
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