いまでも覚えているか?


拝啓

初めて会った日の事今でも覚えているか?
お前が十歳だと思われていた頃の事だ。


突然屋敷から姿を消したお前は何も知らない真っ白な状態で戻ってきたな。
その変わり果てた姿を見て、お前の父母は現実を直視しきれずに目を逸らしてお前を一人放り投げた。
使用人たちも次々とお前に背を向けるものだから、結局寂しいと泣くお前の傍に残ったのは俺だけだったね。


歩くことさえままらなかったお前の手を取り、勉強を嫌がって泣くお前を宥め、全力でぶつかってくるお前に俺も全力で応えた。
俺の後ろをついて歩いて慕ってくれるお前をとても愛しいと思っていたよ。


あの頃のお前は無邪気で教えたこと全てを貪欲に吸収していって、俺が甘やかし過ぎたからか少し我儘になってしまったけど、とてもまっすぐに育ってくれてとても嬉しかったんだ。お前の我儘なんて可愛い物ばかりだったしね。



お前は俺の生き甲斐だったんだよ、ルーク。

あの時の俺は、お前の喜ぶ顔を見るためだけに生きていたよ。



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