誰にでもスキだらけ


他の仲間たちは買い出しや散策に出かけると言って各々出かけて言った為、宿屋でモナさんと二人きりになった。
でもこれは良くある事で、僕らはお互い特に話す事もなく本を読んで過ごすのが常だった。
そして、今日も何時ものように本を読んでいたら、じぃと音がする程強い視線を感じる。
めんどうだし気が付かなかったフリをしようかとも思ったけど、そんなに見られると流石に居心地が悪い。


「…どうしたの?」
「タウさん綺麗だなーって。」


諦めて本を閉じて問えば視線はまだ外さないまま言葉が返ってくる。
本来は褒め言葉であるそれは僕にとってはそうじゃない。
どういうわけか女顔に生まれついてしまったせいで性別を間違えられることは少なくなくて、言われて気分の良いものでは無い、かな。
今までは例外なく黙らせてきたわけだけれど、此処まで無邪気に笑顔を見せられるとすっかり毒気も抜かれてしまった。
モナさんなら良いかと思わせてしまうのが彼女の人柄、かな。


「そうかな?」
「肌綺麗だし、睫毛長くて羨ましー。」


少し語尾を伸ばしたモナさんは語尾を伸ばすついでの様に僕の顔に手を伸ばす。振り払うことはしない。モナさんだし。


「睫毛とか眉毛って男性ホルモンの影響なんだって、タウさん男らしいね。」


僕の頬に触れて、へにゃりと擬音を付けて笑う彼女に不覚にも頬をに熱を集めてしまうのは、仕方ない事じゃないかな。


「そういうの…、誰にでも言っちゃ駄目だよ。」
「タウさんにしか言わないから平気だよ?」


楽しそうに笑う君の何処までが天然でどこまでが計算なのか僕はまだ量りかねているよ。



「怖いね、君は。」





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