かみさまのはなし | ナノ



4 ばいばいかみさま





「チャリ部に入んだ。」



簡単に事実だけを俺に告げ、見た事も無い細い自転車に跨って突然居なくなった。


ずっとずっと先へ俺を置いて、一人だけそのロードバイクとか言うものに跨って行ってしまうのだ。

靖友に縋って動けないままの俺だけを置いて、行ってしまう。

前だけを見て、遠くを見据えて、後ろに居るかこの俺を捨てて、行ってしまうんだね。



福富寿一とか言う、眉毛のせいで。



靖友はあのままで良かったのに、余計な事をする。
返せ、俺の靖友返せよ。



あんな奴に靖友は出会うべきじゃなかった。

あぁ、俺の馬鹿。どうして靖友を一人になんてしたんだ。
ずっと傍に居れば、片時も目を離しさえしなければ、今も靖友は俺の傍に居てくれたのに。



最後に靖友はなんて言った?

お前はグラウンドに帰るべきだ?

靖友が居ないグラウンドに?

一人きりで?

どうして?



嫌だ、そんなの意味が無い。

靖友が居ないグラウンドに戻ったって、だって俺は一人じゃないか。

嫌だ、靖友置いていかないで。

俺を捨てないで、俺を一人にしないで。



寂しい、寂しいよ、靖友。



どこ見てるの靖友。

俺は此処に居るよ。

居るよ、靖友。


俺を見て、見て見て、見てよ靖友。

俺を愛して、俺を大事にして、俺を傍に置いてよ。




ぐるぐると廻る思考で頭が割れそうに痛む。




靖友もあの女みたいに、俺を捨てるんだ。

要らなくなったから捨てるんだ。


あぁ、違う。

元から要らなかったから捨てるんだ。





そうだよね、靖友は最初から同情で俺に手を貸してくれて、可哀想だから俺の傍に居てくれて、始めから俺の事なんて何とも思っていなくて、俺がただ靖友に縋っていただけで、俺が靖友の傍に痛くて、俺が靖友に愛されたくて、大事にされたくて、愛されたくて、愛して欲しくて、






「あぁ、なんだ、そうだったっけ。」






頭の奥で何かがぷつりと千切れた。





「そっか、うん、そうだ、そうだった。俺の靖友じゃ無かったんだった。」





これから先もずっとずっと俺を愛してくれないのなら、ずっとずっと傍に置いてくれないのなら、もういらないんだね。





「ばいばい、靖友。」





さよなら俺の神様、だった人。




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テーマ「人外ファンタジー」
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