12 あいしてかみさま
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放課後の教室は部活中のグラウンドと対比して凄く静かだ。 空はいつの間にか茜色に変わっていて、続々と部活終了の声が響いた。
「帰るか。」 「ん。」
斎藤くんの席から立ち上がった金城が俺を見る。 俺も机に押しつけていた顔を上げて金城を見る。
金城の眼は時々怖い。
なにもかも見透かされているような気になってしまう。
「どうした、北村?」
全て話してしまえば楽になるんじゃないかと、そんな気にもさせられてしまう。
「…俺ね、大好きな子が居たんだ。」
「幼馴染でね、仲は良かったよ。初めて優しくされて、勘違いしたんだ。俺も愛されるんじゃないかって期待したんだ。」
「神様でヒーローだったんだ。」
「大好きで、愛されたくて、傍に居た。」
ポツリポツリと途切れさせながら話す俺の拙い言葉を金城は黙って聞いている。
顔は、見れないなぁ
「でもその大好きな子は俺の事は別に好きじゃなかったんだ。」
「ただあの子の優しさに俺はずっと甘えてて、振り向いて欲しくて、好きになって欲しくて、あわよくば愛して欲しくて、それでも駄目だったから…」
「…逃げてきた。」
向き合うのが怖くて、現実を理解するのが嫌で、馬鹿な俺はあの小さな世界から逃げ出した。
「あのね、今でも毎晩夢を見るんだ。自分が死ぬ夢と大好きな子を殺す夢を、毎晩交互に見るんだ。夢は深層心理なんでしょう?」
何度も何度も身を投げて首を吊って血に塗れた自分の姿を繰り返し見た。 何度も何度も投げ捨てて首を絞めて血に濡らした靖友の姿を繰り返し見た。
「だから、俺は寂しいから死んでしまいたいし、苦しいから殺してしまいたいんだよ。」
ねぇ、金城。
俺は頭が可笑しいんだよ。
愛されたくて、愛して欲しくて、狂ってしまったんだよ。
いっそ、死んでしまったら楽になるんじゃないかと考えて、考えて、それでも生きていたいと贅沢な事を思ってしまうんだ。
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