11 あいたいかみさま
感情だけで良く考えずに部室を飛び出した俺は、行く宛ても思いつかず放課後の教室に落ち着くこととなった。
鞄や制服は部室に有るから帰るに帰れないし、部室には戻り辛い。
俺が前に何処に居て、何をして、どうして中途半端なあの時期に総北に来たのか、聞かれなかったし言いたくなかったから金城達に話した事は無かった。
事情を何も知らない人間から見れば、俺はどう映ったのだろうか。
…あんまり考えたくも無いけど。
眉毛に対する恨みや自己嫌悪で机に沈んだままこのまま消えてしまえれば楽なのにとそう言う事ばかりを考える。
きっと、金城達にも幻滅されて、あの優しい人達にも嫌悪されてしまって、俺はまた一人になるんだ。
一人は良くない。 悪い事ばかり考えるから。
「会いたいなぁ。」 「誰にだ?」
独り言のつもりで口から飛び出て言葉に返事が返ってくるとは思ってなくて驚いた。 いつの間にか教室の入り口に立っていた金城は俺の隣の斎藤くんの席に腰掛けた。
「…謝らないよ。」 「そうだろうな。」 「俺は悪くない。」 「そうだな。しかし良くも無いな。」
机に顔を押し付けたまま言えば、金城は仕方ない奴だと笑った。 優しくしないで、期待してしまうから。 俺なんかでも愛されていいのだと、夢見てしまうから。
「何も聞かない?」 「言いたくないのなら仕方ないサ。」 「…俺、前は箱学に居た。そこで福富寿一とちょっとあった。俺アイツ嫌い。おしまい。」 「そうか。」
やっぱり仕方のない奴だと笑って俺の頭に伸ばされた手は、あの頃のものとは全然違っていてその違いを認識する度に俺はどうしようもなく傷ついた気になって、俺は、やっぱり馬鹿だと思うんだ。
今、目の前に居るのが靖友だったら良いのに、だなんて…
この手が、笑顔が、全部靖友だったら良いのに。
- 11 -
[← □ →]
|