9 すてたかったかみさま
金城達がインターハイから帰ってきた。
それは、期待していたトロフィーを携えてではなく、全てを出し切ったすっきりした表情も見せず、心にしこりが残ったようなそんな感じで、違和感。
「すまないな、トロフィーを持ち帰れなかった。」
「ううん、おつかれさま。…おかえり。」
違和感を感じて居ても、金城も巻島も田所でさえ重い口を開こうとしないのだから、きっとこれは俺が踏み入るべき領域では無いのだろう。 それでも、思うんだ。
「ねぇ、怪我が治るまで、金城の手伝いをするよ。なんでもするよ。怪我をしてまで頑張ったエースでしょ。」
中学生の時、怪我をして崩れる靖友に、知識も経験も足りない俺は何も出来なかった。
でも、今は違う。 沢山本を読んだ、実践も詰んだ。
俺はもう人一人支えられるだけの力があると思うんだ、だから、ねぇ…
「俺は、金城を甘やかしても良いかなぁ?」
あの時、何も出来なかったのが凄く悔しかったんだ、悲しかったんだ。
傍に居るだけで精一杯で、俺は靖友を支えきれなかったんだ。
だから、靖友は俺を捨てたんだ。
あの時出来なかった後悔を別の人間で挽回したってなんにのならないのに、馬鹿な俺に付き合ってくれる金城は本当に、優しいね。
「荷物持つよ。」 「これぐらいは持たせてくれ。あんまり任せすぎると鈍ってしまう。」 「そう…」 「いつも助かってる。すまないな。」 「うん、…ありがと。」
支えられるようになればまた靖友は俺を傍に置いてくれるだろうかだなんて、俺ってほんと馬鹿。
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