05



山のように有ったプリントでも作業自体に手間はかからず、二時間程度で無くなった。

後は職員室に持って行くだけか、と口の中で小さく呟けば突然一番近くのドアが勢いよく開いた。


「綾瀬?こんな時間まで珍しいねー。」


部活帰りなのかジャージ姿の土門くんは私の姿と机の上に詰まれたプリントを確認すると途端に顔をしかめた。
ついてないなと思った。これくらいの仕事をこんなに時間かけないのかと言われるのかと嫌な気持ちになった。
馬鹿だ私は本当に馬鹿だ。もっと要領よくなりたい。もっと要領が良ければ、もっと早く作業を終えられて、土門くんにまで失望されることは無かったのに…


「これ、綾瀬の仕事じゃ無いよね。」


断定した、いつもより低い土門くんの声。返事も出来ないで俯いた。

やだ、やだやだ、見ないで見ないで!!哀れんだ目で私を見ないで!!こわい、怒らないで、ごめんなさいごめんなさいごめんなさい!!やだやだやだ!!!


「なんでそんな怯えるかなー」


吐かれた息。呆れられた。こわい、呆れられた後のがっかりしたあの目。今の土門くんもそんな目で私を見ているに違いない。


「綾瀬、こっち向いて。」


土門くんの声。
いやいやと首を振る私。

もう一度大きく土門くんは息を吐いた。


そして、私の顔は土門くんの大きな手のひらで包まれて、強制的に土門くんの方へ向けられた。


「え、なんで泣いてんの!?」




私の顔を見るなり慌て出した土門くんに、土門くんのせいだなんて言える訳も無くて、とにかく手を離して欲しかった。





視線に怯えた黄昏時。












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