朝の挨拶の飛び交う空間。
雑談と笑い声の飛び交う空間。
明るい空気しか有り得ない筈の空間。
私が居るところはそんなところの筈だった。
最初は些細な事だった。理由もあまり覚えて居ない。
私を気にくわないという一人がその空間から私を排除した。
その後に続くように、一人、また一人と私の存在はどんどん希薄になって行き、
私はこの小さな世界から迫害された。
挨拶の飛び交う空間。
雑談と笑い声の飛び交う空間。
明るい空気しか有り得ない筈の空間。
今はもう、其処に私を認識する人は居ない。
「おはよ、綾瀬!顔色悪いね。ちゃんと朝飯とってる?」
たった一人を除いては。
意図的に廊下側の一番後ろにされた私の隣の席に不幸にも座る事になってしまった転校生の土門くん。
アメリカ帰りだと言う彼は誰にでも分け隔てなく接するらしく、私にも例外無く優しい。
優しいからこそ、彼は酷く残酷な人だった。ただ一つの望みさえ残さずに摘み取って欲しかった。