03



俺は学園裏No,1と呼ばれています。
(廊下を歩けば必ず声をかけられる。)

男からも女からも人気があるから。
(正直迷惑だ。)

なぜ裏なのかというと俺が女だから。
(そんな事今更気にされてもな。)

こんなところでだけ女扱いされても正直困る。
(なら君付けで呼ぶな。黄色い声援なんて要らない。)


本来は学園No,1〜No,5まで居ます。 (人に順位をつけるなんて馬鹿げてる。)


No,1は、ひとつ上の、一之瀬蓮先輩。
(先生からの人望も厚いらしい。俺には関係ないが。)
No,2は、同じクラスの華原雅紀。
(俺はこいつの事が嫌いだ。きっとこいつも俺のことが嫌いだ。嫌いであって欲しい。)
No,3は、今年入った1年生、速水颯太。
(ヒトミのことが気に入っているらしい物好き。)
No,4は、同じく1年生、橘剣之助。
(こいつは好き。意外と俺になついてる。剣之助の作るケーキは旨い。)
No,5は、一之瀬先輩と同じく、ひとつ上の神城綾人先輩。
(この人も嫌い。誰にでも優しくて自分を大切にしてくれないから。)

この5人が学園No.5と言われて女子に騒がれている。 
(俺は当然騒がない。)

偶然にもこの5人がウチのマンションに来てしまったため、うちのマンションの前にはいつも人だかりが出来る。

だから俺は早く家を出て、少し遅めに帰ることにしている。
そうすれば、マンションの前に屯って居る女の子たちは居なくなっているからだ。


今日も同じように少し薄暗くなってきた頃に学校の校門を抜ける。
春とはいえ少しまだ肌寒い。

「ったく…いい加減にしろよな、アイツら…うぜぇんだよ…。」

学校から少し離れたところで、聞き覚えのある声が聞こえてくる。
それでも、この声の持ち主はこんなキャラじゃなかったはずだ。
出来れば聞かなかったことにしておきたいが、多分それは叶わないのだろう。

「あっ。」
「あ。」

2人の声が同時に重なる。
一人は、やばいと言うように。
一人は、とても面白そうに。

(ほら、ね。)

嫌な人にあった。
知らないフリをするにはもう遅い、逃げてしまおうか。

クルリと反転して走り出そうとする肩をガシッと捕まれる。

「ねぇ、今の聞いてた?」

いつもの彼とは違う微笑を見せて、彼、華原雅紀は立っている。
俺がきっと一番、苦手とする人物。
俺は多分、無意識のうちに、彼の爽やかな笑顔に裏があることを知っていた。
だから彼が苦手なんだ。
今、ようやく合点がいった。

「…聞いてた。まさか華原君がそんな人だったなんてね。」

俺はいつものように無表情につぶやく。
何も驚く事は無い。
(彼が二面性のある人間だとしても、俺には関係ない。驚くほどの価値があるか?)

「…君も、同じだろ?自分以外の人間をまったく信じていない。」
「まぁ、そうだろうね。俺は誰も好きじゃないね。信じる価値なんて無い。」

少しだけ嘘をついた。
俺にだって好きな人は居る。
大切にしたい人間は居る。
お前なんかと一緒にするな。
不愉快だ。

「君とは仲良くなれそうだよ、エリカ。」
「俺は願い下げだね。」

でも、人を好きになったって、どうせ俺のものは全てヒトミのものになるんだ。
それなら始めから、誰も好きにならなければいい。

「残念、俺はもう君を気に入っちゃったから、手放す気は無いよ。」

ネクタイを掴まれ、華原のほうに引き寄せられる。

「んむっ!?」

華原は凶悪顔で俺に口付ける。
人影が無いとは言え、誰かに見られたらどうすんだよ・・・・。
学園の人間以外が見たらコレただのホモだぜ?


「いつか、俺に振り向いてもらうから。」


そういって去って行く華原は一体、俺の何が気に入ったんだか。
小さくため息をついて俺も歩き出す。
いくら頑張ったって、無理だよ華原。
他人を愛する気持ちを忘れた俺は、

そんな簡単には、
愛せないんだよ。



それでも何かを期待してしまう俺は酷く、浅ましい。


「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -