01



ヒトミは俺に無いものを持っている。

女らしさや、
(コレは母親譲り。)
可愛さや、
(母親はとても可愛い人だ。)
表情や、
(可愛く、くるくる変わる)
他にも色々。
(彼女は本当は女の子らしい女の子だ。

俺だって、ヒトミに無いものを持っている。

性別に関係なく集まっていても頭ひとつ飛び出る身長、
(コレは親父譲り。)
切れ長の目と引き締まった唇。
(親父は昔はかっこ良かったらしい。今じゃ面影は無いが。)
動くことが好きなので、程よく鍛えられた体。
(でも、やっぱり体は自然と丸みを帯びてくる。)


ヒトミは女らしさを母親から、俺は男らしさを父親から、同時に受け継いだ。
俺たちは双子。
2卵生の双子。

昔は差なんて無くって、2人並ぶと本当によく似た姉妹ね、なんていわれてた。

言い忘れてたけど、俺なんて言ってるけど一応女。
コレでも昔は女の子らしい格好をしていた。
リボンもフリルも甘いものも嫌いじゃないけど、歳を重ねるにつれ少しづつ身長が伸び、男の子たちに混ざって遊んでいたりして、俺はいつの間にか女の子から遠ざかっていた。
リボンもフリルも甘いものも可愛いものすべて俺には似合わないんだそうだ。

だから、服はズボンとシャツを好む。
(ヒトミはスカートやフリルの付いたブラウスが好き。)
髪だってヒトミに合わせて長くしていたけどばっさりと切った。
(親は喜んだ、そっちのほうが似合うわって。)
男の子たちとばかり付き合っているから口調だって少し乱暴になった。
(コレは怒られた。女の子らしい話方にしなさいって。)
親は何度も俺を女の子らしく戻そうとした、可愛いヒトミの横に別の女の子が立っていると比較になるからと。
(そんなの嫌だ、絶対に嫌だ。)

俺はヒトミと比べられるためだけに生まれてきたのかと感じざるを得ない。

家でだって、俺と話をしようなんてやつは居ない。
ヒトミを中心に家族は出来ているんだ。
なら、俺は要らないんだろう?

俺はいつも一人だった。
外に行けば友達が居る、先輩だって後輩だって居る。
だけど、そんなことでは充たされないくらい大きな、穴が俺の心には開いていた。

全てを捨てて逃げたかった。

わざわざ頼んで遠くの学校に通わせてもらえることになった。

家はその学校の近くの親父の所有するマンションの一室を借りれることになった。
(生活費はバイトで稼ぐことになったけど。)
やっと何からも束縛されない日が始まると思った。
(始まって欲しかったんだ。)

でも、ヒトミが余計なことを言った。

「エリカと同じ学校に行きたい。」

俺は目の前が真っ暗になった。
俺のときのように金がかかるからやめてくれと言ってくれと親に向かって念じた。
俺の願いは届かずに、親はあっさりと願いを受け入れ、更にヒトミのことが心配だからと兄貴まで一緒に来ることになった。

最悪だ。

どうせそいつらの生活費は出すからついでに俺のも出してくれるって言うんだろう?
そんな、おまけみたいなのはいらない。
もういっその事こんな家から出てどこか遠くでひっそりと暮らそうかとも思う。

それでも、その行動に出ることが出来ないのは、俺がまだ子供で、無力だから。

俺は俺を分かってくれる人が欲しい。
誰かに理解して欲しい。
誰にも気づかれないように、苦しさを内に押し込めて、無理して笑って、コレで生きているっていえるのか?


俺はまだ、かろうじて枯れていないだろう

だけど、


枯れてはいないけれど、
生きてもいない、よ




心はすでに死んでいる。





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