昨日届いた読めない手紙の事をぐるぐる考えていたら、なかなか寝付けなくて、寝不足の私の顔は凄く酷いことになっていた。
滅多に使わないために化粧ポーチの底に沈んでた、コンシーラーを目尻にぐりぐり擦りつけて、消そうとした隈は、少し薄くなっただけでいまだに存在を主張し続けている。
あーあ。
「何かあったのか。」
学校に行ってもぐったりと机に突っ伏したまま半日を過ごした私の頭上から声が降ってくる凛とした声に、ゆるゆると頭を振った。
「なんでもないー。」
自分でも驚くほど掠れた声で飛び出した返事を受け取った相手は、私の襟首を掴んで引っ張った。
「ちょ、鬼道くん!首!!首締まってる!!」
「知らん。」
「ひ、酷いよぅぅぅぅぅぅぅ、、、」
ぐぇぇ、と蛙のつぶれた悲鳴を上げながらずるずると引きずられ、たどり着いた先はサッカー部部室。
なぜか備え付けてある電気ポットでコーヒーを淹れてくれた鬼道くんは、なにかあったのか、と優しい声でもう一度聞いた。
「なんでもないよ、ほんとに。」
「そんな顔をしてなんでも無いわけあるはずないだろう。」
たっぷりのミルクと砂糖をぶち込んだコーヒーらしきものをコクリと飲み込んだ。
温かい甘さが体中にしみわたって、じんわりと涙が浮かんできた。
「あ、れ…、可笑しいな、なんでだろ…」
「遠距離恋愛は大変か?」
ゴーグルの向こうで優しく微笑んだ鬼道君の目が直視できなくて、ぼたぼたと涙があふれ出す。
ちがう、違うよ、鬼道くん。
「もう、おわったの。」
驚いて息を飲む鬼道くん、嗚咽を漏らす私。
部室の中にどうしようもない空気が漂ってしまった。
しゃくりあげる私の頭をぎこちない手で撫でる鬼道くん。
もう、何もかも止められなかった。
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