「アメリカに帰るんだ。」
まるで異世界に迷い込んだかのよう。
突然、言葉が急に理解出来なくなって、ふぅんと気の無い返事が口から落ちた。
異文化コミュニケーションみたいにお互い意思の疎通が上手く出来なくって、困ったように笑われた。
「もう、日本には帰って来ないつもり。」
膝から崩れ落ちるかと思った。泣きそうな顔をぐっと引き締めて、無理矢理作った顔はきちんと笑顔に見えるだろうか。
今、私が泣くのはとても卑怯だ。
「そっか、じゃあ、」
別れよっか。
上手く声に出せたのかは分からないけれど、目の前の君の困った笑顔が少しだけ歪んだ。
まだ、好きでいてくれているのだと自惚れても良いのかな?
「さよなら、土門くん」
今度は上擦った声がしっかりと耳まで届いた。
泣いちゃ駄目なのに、私は駄目だなぁ。
上手く笑顔が作れ無くて、元気でねと早口で伝えて背を向け走る。
最初の角を曲がったところで溢れるものを抑えきれなくて、膝をついて咽び泣く。
土門くんがこっちに来ませんように。土門くんに聞こえませんように。そればかりを思って未だ混乱したままの頭を抱えてうずくまる。
君の事を今すぐ嫌いになる方法を教えてください。
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