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愛想笑いで始まるいつもの朝。
家を出て学校に向かって、またいつもの一日が始まるんじゃないかと、昨日の事なんて無かった事にしたくてそう信じて居たかった。
にっこりと笑った土門くんの顔。今でも思い出すとちょっと怖い。
靴を履いて、家を出ようと玄関の扉を開けて、外にいた人と目があって、すぐに閉めた。
あり得ない、こんなところにいるなんてありえない、いやだいやだいやだ、、、
「綾瀬ー、どうした?早くしないと学校遅刻するぞ?」
いつもと同じ土門くんの声に危うく騙されて玄関を開けようと思ったけど、そんなの嘘だ。
今日はいつもより早く出ようと思ったから、時間の余裕は馬鹿みたいにある。
騙されるか、騙されてたまるものか!!
もう今日は学校休もうかな、とずるい事を考えた私は、早く学校行きなさいというお母さんの声に押し出されて渋々外に出るしかなかった。
「おはよう、綾瀬!」
「お、おはよう、土門くん…」
玄関を開けた先で、にっこり笑った土門くんは私の引きつった表情を見るなり、嘘っぽい笑顔を深くして、
「言ったでしょ?四六時中監視するって。」
そう、喉の奥で笑った。
覚悟を決めて逃げよう、思ったときにはもう遅く、私の手を無理矢理取った土門くんは昨日のような怖い顔を浮かべて、逃がさないよと囁いた。
私はまた、引きつった笑顔を浮かべながら、逃げられない事を悟ってしまった。
ようこそ、出口のない迷宮へ
「じゃあ、学校行こうか、恵梨花。」
低く囁かれた単語が自分の名前とは結びつかなくて、戸惑った。
駄目だ、土門くんは、本気だ。
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