09





お気に入りで大事に大事に使っていたお茶碗が、がしゃんと大きな音を立てて呆気なく割れてしまった。
続けて響く甲高い声。
始まった。
きゅっとスカートを握りしめて、浴びせられる言葉を受け止める。




「本当に貴女はいつまでたっても駄目な子ね!!」




言われなくても知ってるよ。
毎日毎日苛々と怒ってばかりのお母さんと怒られてばかりの私。
お母さんは感情のままに怒鳴りつけてばかりだし、私は馬鹿だからお母さんの言ってることの半分も分からない。
それに対してお母さんの苛々は募ってゆくけど、そんなのこっちだって同じ事。




「何よ、その目は。言いたい事が有るなら言いなさいよ。」




聞いて上げるから。声のトーンを落としたお母さん。嘘吐き。一度だって私の話をまともに聞いてくれたこと無いのに。いつも頭ごなしに否定するだけなのに。そうやって体面守るために簡単に嘘を吐く。嘘吐き。大嫌い。嫌な人。どうせ聞いてくれないくせに。嘘吐き。嘘吐き嘘吐き嘘吐き嘘吐き嘘吐き嘘吐き嘘吐き嘘吐き嘘吐き嘘吐き嘘吐き嘘吐き嘘吐き嘘吐き嘘吐き嘘吐き嘘吐き嘘吐き嘘吐き嘘吐き、うそ つ き 、、、


思ってることは沢山ある。言わなきゃいけない口に出さなきゃいけないのに、否定されるのが怖くて、私が出せたのは大粒の涙だけだった。


慌てるでもなく私を見下ろすお母さん。泣けばすむとでも思って居るのと言うお母さん。大きな溜め息を吐くお母さん。駄目な子ねと私を否定するお母さん。





怯えて泣く卑怯な私。




変わらない立ち位置。変わらない日常。何度も死にたいと思ったけど、死ぬ度胸も覚悟もない狡い私。
毎日泣いてばかりで、苦しくて、家にも外にも私の味方は居なくて、どんなに辛くても相談出来るような友達すら居なくて、私は独りだ。家族にも友達にも期待しない。誰にも期待しない。






それで、良かったのに、

期待してしまう。






朝、教室に入った後に向けられる視線とは違う優しい笑顔を、声を、暖かさを、

期待してしまった。





それ無しでは生きてられない程に、彼の預かり知らぬ所で、私は彼に依存している。







今日の絶望、明日の希望。










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