傍観編 25







「おはよう、凛ちゃん。」
「ぅ、おはよう、叶くん。」




生徒の溢れる朝の食堂で、叶くんに声をかけられて、昨日の事は夢じゃなかったのだと実感する。
男子生徒に混ざっていても遜色ないこの人が本当は女の子だなんてやっぱり信じられないけれど、あの感触は本物だった。詐欺だ。



後でお話ししようね。と小さな声で囁いてから笑顔を崩すことなく朝食を持って食卓へ向かった。




今まで一度も無かったのに今朝から急に、恥ずかしながら自意識過剰ではなく、一部の生徒に異常なまでに好かれている私に、話しかけた叶くんに向けられる視線は多種多様だ。


嫉妬、好奇心、呆れ。


様々な感情が渦巻く視線を受けながらも平然としている叶くんは強いわけではなく、ただ慣れているようだった。




「天女様…叶と仲良くなったんですか?」
「そうなの。昨日、ちょっとお話してね。」




朝食を渡しながらまた今日も事務的に答えていく。
この人は、誰だったかな。睫毛が長くて羨ましい。




「天女様、おはようございます。」
「おはようございます。」




笑顔を作って事務的に人を捌いている私には睫毛の長い彼がどんな顔をしていたかなんて見えては居ませんでした。







「ふぅん、叶、興味ないって言ってたのにな。」










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