傍観編 21



てってれー、叶はくの一教室を仲間に加えたー。

頭の中で懐かしのゲームミュージックが鳴り響く。
くの一を仕切っているヤエさんが味方に付くと宣言した限り、彼女への虐めもマシになるかな。
小さな嫉妬がエスカレートした結果だし、彼女が忍たまに対して好意を持っていない事が広まれば多少はそれも落ち着くだろう。
俺が動く前から俺の周りが動いてて、なんだか外堀を埋められているようでなんだかなぁとため息を吐く。


「とりあえず、会いに行くか。」


会わなきゃ何も始められない。
俺は、彼女を知らなきゃいけない。
俺も、あの人みたいに誰かを支えられるだろうか。




天女様と呼ばれる彼女の部屋はくの一長屋の一番奥にある。
くの一教室との協力関係を築いた今は最低限の罠を避けるだけで簡単にたどり着くことが出来る。
襖の向こうで声を殺して涙を流す姿を、きっとあいつらは知らないのだろうね。
彼女はとても頑張っているよ。
笑顔を崩さず、慣れない仕事を必死でこなして…
俺には真似出来ないな。


軽く襖を叩くと、息を飲んで怯える気配。
まるで小動物のような可愛い普通の女の子だ。


「怯えないで、いきなりごめん。五年い組関口叶。話をしに来たんだ。」


ゆっくりを襖を開けて、涙で目を濡らす彼女の前に跪く。



「何から話せば良いかわかんねぇな…。」



困った顔で笑えば、彼女の顔も少しだけ緩んだ。


「俺、平成分かるよ。」


驚いて目を開く彼女に更なる追撃をかける。



「ビルもガスコンロもテレビも知ってる。」
「信じられないなら平成にしかないものを言ってくれたら絵に描いて説明するよ。何がいいかな、東京タワー書こうか?」



「…誰にも内緒だけど、俺も平成から来たんだ。」





だから、ねぇ、話をしよう。





限界まで目を見開いてぽろりと大粒の涙を零した彼女は、やっぱりただの女の子で、大変だったねと頭を撫でれば、彼女の我慢はすぐに決壊してしまった。






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