傍観編 17





数馬にそろそろ動くよとドヤ顔決めて宣言したものの、どう動くかを決めかねていた俺は彼女を眺めながら深いため息をついた。


「なんで、彼女の事ちゃんと見てあげないんだろ。」




天女様の朝は早い。

日の出前に目覚め身支度を整えた後すぐに食堂へ向かい朝食の準備に取り掛かる。
食堂のおばちゃんに割り振られた仕事を懸命にこなした後は、配膳と後片付け。
洗い物と食堂内の掃除は殆ど彼女がするようだ。
その間におばちゃんは昼食の下ごしらえをする。
おばちゃんとの仲は良好なようで、一緒にお茶を飲んでいる姿をよく見かける。
昼食が終われば事務室へ向かい吉野先生に仕事を貰う。
内容は主に掃除とか書類を届けたりとか簡単なものばかりだけれど一つ一つ丁寧にこなそうとする。
彼女自身はとても真面目で勤勉だ。
問題があるとすれば授業が終わった後、だ。
天女様天女様と彼女を慕う男達が彼女の周りに集まり、彼女の仕事の手を止めさせて口々に話し出す。
今日の授業の事に始まり、自慢話や次の休みの誘い等、その口は止まる事は無い。
彼女は戸惑いながらも笑顔を作り一つ一つ丁寧に答えつつも仕事をこなそうとしているが、彼女の気を引きたい男達は彼女の手から箒を取り上げ書類を取り上げ、何もしなくて良いのだと彼女の存在価値を奪っていく。
取り上げられるたびに彼女の顔が歪んでいるのが見えないんだろうか。



「恋は盲目ってやつか。」


あの文次郎先輩までも頬を赤く染めてあの輪に入っているというのは、流石にこう、心にクるものがある。


「泣いてんのわかんないのかなー?」


一度だけ、たったの一度だけだけど、確かに彼女は言ったんだ、死にたいって、唇を噛みしめて。




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