傍観編 16




「すいません、叶先輩。いつも手伝って貰っちゃって…」
「委員会がまともに機能してないから、やる事無いんだ。」


気にしなくて良いよと、しょげる数馬の頭を撫でてから、新野先生に運ぶように頼まれた保健室の備品を抱え直す。
この量を下級生だけに運ばせようなんて、新野先生も中々の鬼だ…

各委員長が出しゃばってこない限り予算で揉めることもないし、確かに帳簿は溜まっているが、あの茶番がない分平和だ。

各委員会も三年以下の下級生達がそれぞれ頑張ってくれているおかげでなんとか形になってきた。
各方面へ飛び回ってくれている、学級委員長委員会の尽力のおかげでもあるだろう。


「いつまで…」
「んん?」
「一体、いつまでこの状態が続くんでしょう…」


数馬が言うこの状態が上級生の居ない状況の事を指すのなら、俺に答える術はない。



そんなの、俺が知りたいくらいだよ。
近頃兵助は以前にも増して部屋に戻らない。
授業以外で見かける事は殆どない。
最後に、声を聞いたのはいつだったかも、分からない。



「数馬はさ、天女様の事嫌い?」
「あの人のせいで、先輩達は可笑しくなったんですから、嫌いです。」


あの人さえ現れなければと、顔を歪ませた彼も、彼の先輩を敬愛している良い子だ。


「数馬は怒るだろうけど、俺はあの人の事嫌いじゃないぞ。」


数馬は息を飲んで裏切られたという顔で俺を見る。
俺は笑顔を作って、言葉を続ける。


「数馬はあの人の何を知ってるんだ?例えば…、そうだな、名前とか年齢とか好きなものとか嫌いなものとか。何か一つでも知ってるか?」


目を泳がせて、困った顔で俯いた数馬の頭を撫でる。


「俺はね、何も知らない人の事は嫌えない。」


綺麗事だと言われるだろうけど、彼女になにか事情があるかも知れないよ。
俺の仲間達がなんの理由も無しに変わってしまっただなんて思いたくもないんだ。


「俺達は忍者のたまご、忍たまだろ?嫌うのは、彼女を知ってからでも遅くないんじゃないかな?」


学園がおかしくなった原因が、果たして彼女だけなのか、見極めてからでも、遅くないよ。



「俺もそろそろ動こうと思ってる。」



良い方にか悪い方にかは、分からないけど、動く人間が増えるにつれて状況は変わってく。



俺は、覚悟を決めたよ。

だから、お前達も良く考えて決めなさい。

自分の信じるものの為に、仲間を切り捨てる覚悟を、ね。





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