傍観編 15




「おれが居ないうちに、学園が可笑しくなった。」


大量に饅頭を咀嚼しつつ、しょっぱいものが食べたくなるよねと俺の秘蔵の煎餅まで引っ張り出してきた勘ちゃんは、口に含んだものを飲下した後にそう言ったが、俺はそうかなぁと首を傾げた。


「空から降ってきた不審者に上級生の大半が骨抜きになって下級生一同は困惑しているって庄左が言ってた。」
「骨抜きっても、上級生だってお年頃だから色に溺れる事もあるんじゃない?」
「おれと叶は大丈夫。だからあいつ等が可笑しい。」


鍛錬不足じゃないの情けない!と勘ちゃんはぷりぷり怒りながら次の饅頭に手を伸ばした。


「…まぁ正直言うと、可笑しいと思わなかった訳じゃ無いんだ。」


彼女が文字通り落ちてきて、それを受け止めた人外もとい七松小平太先輩を筆頭とする委員長組が彼女を学園へ置く事を要望し学園がそれを受け入れてから二週間だ。
その二週間で、がらりと変わってしまった事は少なくない。
勘ちゃんが言いたい事も分かる。


「でもな、勘ちゃん。彼女になにか出来るとは思えないんだ。俺だってこの二週間何もしていなかった訳じゃないし。」


彼女は確かに言ったんだ『平成』から来たのだと…
同郷の者として気にならない訳がないだろう。
だから、始めの1週間は殆ど付きっきりで観察していた。
申し訳ないけど、風呂も何度か覗かせて貰った。


「結果として分かったのは、彼女は何の変哲も無い普通の女の子だと言う事だったよ。力が有るわけでも知識が有るわけでも無く、身も心も疲れ切った可哀想な子だ。…彼女良く頑張ってるよね。」
「叶まで可笑しくなったぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!なんなのあの雌豚叶までかどわかすなんて信じられない!ねぇ叶はあの雌豚が好みなの?ほの字なの?」


おれが居るのに叶の浮気者!と叫んだ勘ちゃんに対して俺がドン引きしたのは言うまでも無いと思う。



なにこれこわい。



「俺、今勘ちゃんの友達辞めたくなった。」
「えっ、やだ叶おれを捨てないで!!やだやだ!!」
「ウン、カンチャンステナイ。ダイジョブダイジョブ」
「やだぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」




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