傍観編 13





「富松、ちょっといいか?」
「…どうぞ。」


自室で委員会日誌の空白を埋めているところ、襖の向こうから聞こえた声に小さく返事をする。

返事の後に開いた襖の向こうに居る先輩の姿に驚いた。


「やっぱり、お前も泣いてたんだな。おいで。先輩が良い子良い子をしてあげよう。」


ふざけた口調で、でも心底心配していますと言う声でそう言った先輩の腰や背中や腕などには、沢山の引っ付き虫、もとい、同級生たちの姿があった。

恥も外聞も捨て去って声を上げる者もいれば、唇をかみしめ小さく肩を震わせるだけの者もいる。
ただ、全てに共通するのは、皆目が濡れている。




もう、限界なのだ。





学園の委員会は学園を担う重要な機関であり、その全ては委員長や委員長代理など上級生が指揮を取ってこそ成り立つもので、自分達のような下級生が委員長を見よう見まねで真似したところで、上手く行くはずも無く、じわりじわりと、荒んでいく。


「富松、おいで。」


もう一度、掛けられた先輩の声に、ふらふらとした足取りで先輩の身体の唯一開いていた胸に飛び込んだ。
つぶれた蛙の悲鳴のような声が聞こえたような気がするが、そんな事はもう構ってられなかった。


「良く頑張ったな、富松。お疲れ様。後は俺に任せてゆっくり休んで構わないぞ。」


背中に触れる優しい温度についに、俺も恥も外聞も投げ出してしまう事になる。


「関口先輩、よろしくお願いします。」


かろうじて絞り出した言葉を受け止めた先輩はいつものように、任せとけと笑うのだった。




「お前達はみーんな俺が守るよ。」




小さな子どもは先輩達が大好きでした。
だから初めは、先輩達不在の穴を一生懸命埋めながら、先輩達を信じて待ち続けていたのです。
それなのに、一向に帰って来てくれないどころか、委員会だけではなく授業まで放棄し始めたその姿に、一人、二人と、少しずつ、ぽきりぽきりと心が折れてゆきました。




5つの委員会を支えなければと足掻いた彼らだってまだ12歳の少年なのに、何故守ってやらないのだと、あの子は酷く憤慨しました。




(可哀想に、こんなにぼろぼろになってまで信じていたこの子達を、どうして容易く突き放せるんだ…)







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