傍観編 09





『いってきます』と『いってらっしゃい』
『ただいま』と『おかえり』


大好きな先輩を失った友達が、ほんの少しの外出でも酷く不安がるものだから、必ずその言葉をかけあう事が、おれ達の約束だった。

1人が出れば、5人で見送り、5人で出迎え。
2人が出れば、4人で見送り、4人で出迎え。

もう4年も続いていた、儀式のような習慣。
必ず帰ってくると言う約束と安心感を、あの子の為に。



おれ達の約束。
ある意味で、友情の証。





でも、それは俺が出かけている間に崩れてた。





「天女様は本当にいたんだよ、勘ちゃん!」
「とても綺麗な人なんだ。」
「あぁ、凛さん…とても可憐だ…」
「勘ちゃんも会ってみろよ。すっげー良い人だから!!」





学園長のお使いと言う名の面倒事から帰ってくるなり、浴びせられた言葉に文字通り開いた口がふさがらなかった。

ねぇ、おれ今帰ってきたんだよ。まだ、ただいまも言ってないし、おかえりも言って貰えてない。



それなのにおれが口を開く前に、行ってしまうんだね。
お前達は、変わってしまうんだね。



友達の背中を見送ってため息を飲み込んだ後、ふと、一人足りないことに気が付いた。
寂しがりで、一人が嫌いで、でも意地っ張りなおれの友達。



「…叶のトコに行かなきゃ。」
「此処に居るよ、勘ちゃん。」



(遠くで女の子の声が聞こえた。媚びた、嫌な響きだった。)
(近くで友達の声が聞こえた。今にも泣き出しそうな小さな声だった。)







『不変を愛する少年は、嗤う』






「ただいま、叶。」
「おかえり、勘ちゃん。」



変わっていくものは大嫌い。



ねぇ、おれが守るよ。









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